ぷっくり丸と一緒

ぷっくり丸と一緒~外科系女医の試行錯誤の日々~

仕事と家事と育児を欲張る形成外科医

読書~身銭を切れ~

 

「身銭を切れ」読み終わりました。

同時進行で他の本も読んでいたので(小説:コンビニ人間、無銭優雅)遅くなりました。

3冊の中では一番長くて読みにくい本でしたが、一番面白かったです。

 

身銭を切る=リスク・責任をとる、と言い換えればよいでしょうか。自分がした行為の結果がどうなろうと自分には実害がないところにいる人たちのことを終始強く批判している本です。本の中では偉い人に対して憤っていることが多かったけれど、これは結構私たちの身近にも当てはまることがあります。

私は特にこの生活になってから、SNSにはどっぷり浸っているのですが、匿名性が高いこういったコミュニティは身銭を切っていない情報が溢れています。いま問題になっているネット上での誹謗中傷も、身銭を切るリスクがないことが前提となって蔓延しているわけですが、それだけでなく、例えば数日に一つの割合で新しい基礎化粧品をおすすめしているようなツイッターも明らかに身銭を切っていない情報です。楽天roomも、実際買ったものを感想とともに載せている人と、とにかく目についたものを大量に載せている人とではっきりわかれます。こういうのはそもそも商業目的なので悪いことではないですし、その人の目を通したセレクトという付加価値があるのですが、見る側はそのことをいつも意識する必要があります。あらゆる種類の情報をふるい分ける上で、身銭を切っているかどうか、は一つの指標になります。ネットで投資の勉強をする中でもそのことは念頭に置いていました。

 

もう一つの側面として、逆に、自分が身銭を切っているかいないかを意識することで、周りの人に対して誠実になり、また不確実さが許されないため自分自身を鍛錬することにもなります。著者はある法典の講演をする前に、はたとそれが書かれている言語についての知識が足りないままに話をするのは違うと思い立ち、講演の前にその言語を習得します。

 

なにか主張したいことがあるときも、ついつい、どうとも取れるような穏便な言い方を選びがちで、たいしたことでなければそれでもいいのですが、重要な局面では自分にも跳ね返りがくる覚悟で、さらに言葉でごまかすより行動で臨んだほうが相手に与えるインパクトも強くなって自分の本気さがダイレクトに伝わります。

そんなことは今までもわかっていたけれど、一冊丸々ずっとそのことが書かれているので、読み終わってさらに意識するようになりました。

全編にわたってずっと激しい論調なのでさすがに疲れて息抜きに小説を挟んだのですが、この本を読んでいるときのテンションで小説を読むと、空気がぬるくて入り込めず。チョイスミス。

 

 

無銭優雅 (幻冬舎文庫)

無銭優雅 (幻冬舎文庫)

  • 作者:山田 詠美
  • 発売日: 2009/08/01
  • メディア: 文庫
 

 私がフォローしているTwitterの方が、久しぶりに一気読みしたと書いてあった本。贅沢貧乏(森茉莉)と通じるところがあるという一言で読んでみることにしました。

主人公と恋人の関係性の湿度がいいです。万年床の中に二人でいるときの、お布団の中の湿度。一時の燃えるような情熱ではなくて、日常的にぴったりと寄り添う親密さ。森茉莉と通じるかどうかと言われると、他人の評価からはみ出たところで、当人たちが深い幸せを感じているというところが同じかなあ、強いて言えば。私は森茉莉にはナルシシズムと耽美主義を強く感じるので、そういう意味では似てはいませんでした。

 

 

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 誰かのおすすめ。誰かは忘れてしまいました。あ、たぶん身銭を切れは勝間さん関連でのおすすめでした。

内容はとても現代的。無銭優雅にある湿度が全くなく、空調が効いたコンビニっぽい雰囲気です。

途中から出てくるダメ男がいるのですが、後半はずっとその男にイライラしていて感想も何もすべてそのイライラに持っていかれてしまいました。もう、主人公はずっとコンビニで働いたらいいよ。そして店長になったらいいよ。そしたらなにも問題ないよ。本人が気にしなければ、周りの評価なんてないのと同じ。気にしない、気にしない。

あとがきを読んで驚いた。芥川賞

 

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