ぷっくり丸と一緒

ぷっくり丸と一緒~外科系女医の試行錯誤の日々~

仕事と家事と育児を欲張る形成外科医

読書~暗幕のゲルニカ~

 

暗幕のゲルニカ(新潮文庫)

暗幕のゲルニカ(新潮文庫)

 

 私は芸術に造詣が深くありません。有名な画家が描いた絵で好きな絵はいくつかありますし、その技術を単純にすごいと感心もします。でも美術館に行くのは年一回あるかないかくらい、体系的に美術の歴史に詳しくもありません。イギリスに旅行に行ったとき、有名な美術館で美術の資料集に載っているような絵画を見る機会がありましたが、資料集とおんなじだ、意外と小さい、という感想しか湧いてきませんでした。

ゲルニカについては小学生のころにポストカードを持っていた記憶があるので、好きだったのだと思います。どちらかというと暗い絵や怖い話に惹かれる子供だったので。それもあって読んでみました。

原田マハさんの本を読むのは初めてでしたが、人物やその周辺の描写が理知的で、描写を味わうというよりはストーリーを効果的に追わせる文章だと思いました。交互に描かれる現在と過去のエピソードの構成や随所にただよう緊迫した空気感など面白く読んだのですが、致命的な問題が私側にあり、味わいきれない結果となりました。原因は、私がそこまで絵に興味がないことです。そのために、ゲルニカを中心に多くの人が時代を超えて奮闘している様子に入り込めず、「いや、でも絵だよ?もっと大切なものが色々ない?」とどこかで思ってしまうので、主題が絵でなければもっと楽しめただろうなと思いました。

ゲルニカが書かれた時代は戦争があり、それもお話に大きく絡んでくるのですが、戦争の話を読むたびに、現在自分が抱えている悩みなんて、ある日突然家族が拷問されたり殺されたりするのと比べたら小さいなと思って今の幸せを噛み締めます。SNSで政治批判をしても突然家に特殊警察が来て連れていかれることはないし、日本にいる限り日本人だからといって殺されることもないし、いろいろ問題はあってもこの時代よりはマシだなと無防備に寝ている娘を横目に見ながら読んだのでした。

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